回転寿司「110円戦争」再燃 ― くら寿司値下げの裏にあるもの

2026年8月25日

こんにちは!
開業支援集団東京Ringです。
夏の疲れも出てくる時期ですが、価格戦略という点で回転寿司業界が面白い動きを見せています。
今回はその中身を飲食店経営の視点で読み解いていきます。

くら寿司、最低価格を110円に。ただし「値下げ」だけではない

くら寿司は2026年9月4日から、寿司メニューの価格を全面的に見直すと発表しました。

出典:くら寿司公式プレスリリース「寿司メニュー価格改定のお知らせ」/グルメWatch(2026年8月20日)
https://gourmet.watch.impress.co.jp/docs/news/2134100.html

  • 最低価格を115円から110円に値下げ(対象37品目)
  • 一方、これまで115円だった「サーモン」「ゆず塩かつおたたき」「生えび」など33品目は120円に値上げ
  • たまご焼き、ハンバーグなど子ども向け人気メニューはより手頃な価格に改定(ファミリー利用を意識)
  • 1皿で2種類のネタが楽しめる新商品「相盛り」を110円で初登場
  • 看板商品「熟成まぐろ」は120円に据え置き、業界最安値と位置付け

くら寿司は改定の理由について、原材料高騰や円安によるコスト上昇が続く中、AI活用などで効率化を進めてきたものの、自社努力だけで品質を維持するのが難しくなりつつあるためと説明しています。

スシローも「本鮪中とろ110円」フェアを展開中

出典:グルメWatch「スシロー”110円”の『あわび1貫』『本鮪中とろ』など夏の新メニューが登場」(2026年8月19日)
https://gourmet.watch.impress.co.jp/docs/news/2132877.html

  • 「本鮪中とろ」「あわび1貫」を110円〜で提供
  • 販売期間:2026年8月19日〜30日(販売予定総数492万食が完売次第終了)
  • 同様のフェアは今年3月にも実施しており、季節ごとの集客施策として定着しつつある

実は「値下げ競争」ではなく「メニュー設計競争」

ここで注目したいのは、くら寿司もスシローも、単純に「全体を安くしている」わけではないという点です。

くら寿司は37品目を値下げする一方、33品目を値上げしており、実質的には「入口価格(110円)を目立たせつつ、他の商品でバランスを取る」メニュー構成の組み替えです。スシローも、期間・数量限定の目玉商品で話題を作る一方、通常メニューの価格帯は維持しています。

つまり、これは「安さで勝負する」というより、「一部の目玉商品を思い切って安く見せることで来店動機を作り、店全体の収益は他のメニューで確保する」という設計です。これは大手チェーンに限らず、個人店・小規模店でも応用できる考え方です。

自店でも使える「目玉価格×全体調整」のシミュレーション

たとえば、月間1,000組(客単価3,000円)が来店する店舗で考えてみます。看板メニュー1品を原価に近い110円台まで下げて集客の呼び水にし、月100食程度提供すると仮定します。通常この商品の価格が400円(原価150円、粗利250円)だとすると、110円への値下げで粗利は40円まで下がり、1食あたり210円の粗利減、月100食で21,000円の粗利減です。

一方、この目玉商品によって新規客が増え、他のメニューの単価を平均3%引き上げても客離れが起きにくくなったとします。客単価3,000円が3,090円になれば、月1,000組で売上は9万円増加します。

21,000円(目玉商品の粗利減)に対し、90,000円(全体単価上昇分)

という構図になり、目玉商品単体では赤字でも、全体では十分にプラスに転じる計算です。重要なのは、値下げした商品の損失額を必ず金額で把握したうえで、他のどこで回収するかをセットで設計することです。

具体的に確認しておきたいのは、次の点です。

  • 自店のメニューの中に、「原価ギリギリでも集客の起爆剤になる商品」を作れそうな候補があるか
  • その商品を安くした場合の粗利減少額を、月間の提供数ベースで具体的に計算できているか
  • 目玉商品以外のメニューの価格・原価構成を見直し、全体でバランスを取れる余地があるか

⚠ 注意点

目玉商品による集客効果は、原価管理と提供数の上限設定(くら寿司・スシローも品数限定にしている点がポイント)をセットで行わないと、赤字が際限なく膨らむリスクがあります。「安くする商品」と「上限数」「他メニューでの回収計画」の3点は必ずセットで設計してください。

📝 まとめ

回転寿司大手2社の動きは、単純な値下げ競争ではなく「目玉商品で来店動機を作り、全体で収益を確保する」メニュー設計の工夫です。自店でも、目玉になり得る商品の原価と、それによる粗利減少額をまず数字で把握し、他のメニューでどう回収するかをセットで考えてみることをおすすめします。