こんにちは!開業支援集団東京Ringです。
この一週間、外食業界のニュースを追っていて目についたのは「買収」「承継」という言葉の多さでした。閉店や倒産ではなく「引き継がれる」形での業界再編が進んでいるので、今回はこの動きを取り上げます。
老舗うどん店が選んだ「店舗を売らないM&A」
出典:飲食店ドットコムジャーナル「立ち退き迫る老舗うどん店が選んだ『店舗を売らないM&A』とは?」(2026年9月2日)
https://www.inshokuten.com/foodist/article/8397/lead/
- 東京の一等地で50年以上営業してきた老舗うどん店が、建物取り壊しによる立ち退きに直面
- 店舗そのものを売却するのではなく、「屋号とレシピだけを引き継ぐ屋号承継」という新しいM&Aスキームを選択
- ブランド価値を維持したまま事業を存続させる手法として紹介されている
34歳経営者が17年続く焼き鳥チェーンを買収
出典:フードリンク「【速報】34歳・Mostfun大崎氏が『やきとん木々家』の買収を発表」(2026年9月3日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/09/03110001.html
- Mostfun代表・大崎氏(34歳)が、約17年の歴史を持つ「やきとん木々家」の買収を発表
- 「従業員満足度世界一」と「2030年100店舗」の両立を掲げる次世代経営者による戦略的M&A
同様の動きとして、投資会社ミライニホンベンチャーズが、福岡発・30年以上の歴史を持つ焼肉ブランド「ヌルボン」13店舗をJR九州から買収したことも報じられています(2026年9月2日)。
出典:フードリンク「投資会社、焼肉『ヌルボン』13店舗をJR九州から買収」
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/09/0261637.html
異業種参入・大手の選択と集中も進む
貸会議室大手のTKPは、仕出し・ケータリング事業を展開する味工房スイセンを完全子会社化しました(2026年9月3日)。
出典:フードリンク「貸会議室TKP、仕出し・ケータリングを完全子会社化」
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/09/0362017.html
一方、大手のハウス食品は、傘下のカレーハウスCoCo壱番屋の売却を検討していると報じられました。壱番屋側は非公開化を含む検討を認めつつ「決定事実はない」とコメントしており、度重なる値上げによる客離れが背景にあるとみられています(2026年9月1日)。
出典:フードリンク「ココイチ、ハウス食品が売却か」
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/09/0161423.html
なぜ今、「引き継がれる」動きが増えているのか
これらの事例に共通するのは、後継者不在や収益構造の見直しといった「守りの理由」だけでなく、買い手側の多様化という「攻めの要因」です。
かつては同業の大手チェーンが買収する例が中心でしたが、今回のニュースでは34歳の若手経営者、投資会社、異業種の貸会議室会社など、買い手の顔ぶれが広がっています。
人手不足やコスト高で単独での事業継続が難しくなる店が増える一方、ブランドや従業員、常連客といった無形の資産に価値を見出す買い手も増えているため、「閉店」ではなく「引き継ぎ」という着地点が選ばれやすくなっていると考えられます。
自店の事業承継、選択肢を今のうちに整理しておく
後継者問題は、多くの個人店・小規模チェーンにとって他人事ではありません。
今回の事例は、選択肢が「親族に継がせる」か「畳む」かの二択ではないことを示しています。
- 親族承継:子や親族に店を継がせる、従来型の方法
- 従業員承継(MBO):長く勤めた従業員に経営権を譲る方法
- 第三者承継(M&A):同業者、投資会社、異業種など第三者に店舗・会社ごと譲渡する方法
- 屋号承継:店舗自体は畳んでも、屋号・レシピ・ブランドだけを第三者に引き継いでもらう方法(今回のうどん店の事例)
たとえば、月商300万円、営業利益率10%(月30万円、年360万円)の店舗を第三者承継する場合、M&Aの相場観として年間営業利益の3〜5倍程度が譲渡価格の目安になることが一般的です。
これに当てはめると、譲渡額はおおよそ1,080万円〜1,800万円というレンジになります。
屋号承継のように店舗自体を引き継がない場合は、のれん代(ブランド・レシピの価値)のみの評価となるため、これより低い金額になるケースが多いですが、「畳んで終わり」よりも大きな資産回収につながる可能性があります。
確認しておきたいのは、次の点です。
- 自店の後継者問題について、親族承継以外の選択肢を検討したことがあるか
- 立ち退きや契約終了などのタイムリミットが来る前に、事業承継の相談先(M&A仲介会社、商工会議所など)を把握しているか
- 屋号・レシピ・常連客との関係など、店舗そのもの以外に価値として残せるものが自店にあるか
⚠ 注意点
M&Aや事業承継は、直前になって動き出すと交渉力が弱まり、買い叩かれるリスクが高まります。
今回のうどん店の事例のように、立ち退きなどの期限が見えている場合は特に、早い段階で専門家に相談し、複数の選択肢を比較検討する時間を確保することが重要です。
📝 まとめ
外食業界のM&A・事業承継は、単なる「淘汰」ではなく、買い手の多様化を背景にした「攻めの再編」へと性格を変えつつあります。
後継者問題や立地条件の変化を抱えている店舗は、畳む前に「引き継ぐ」選択肢がないか、早めに情報収集を始めておくことをおすすめします。





