「客単価アップ」と「客数減」のジレンマ——9月月次決算から見る外食業界の現在地

2026年10月16日

🌱 相次ぐ9月月次決算から見えてきた、共通の構造

こんにちは!開業支援集団東京Ringです。
2026年9月の月次・中間決算が相次いで発表されました。大戸屋、エターナル(元鳥貴族)、ガーデン、ロイヤルホールディングス「てんや」——多くの外食チェーンが、値上げによる客単価アップで売上を一定程度カバーしながらも、客数の回復には苦戦しています。
この「客単価頼み」の構造は業界全体にどんな影響を及ぼしているのか。
ラーメン業界の倒産増加というもう一つのデータも合わせて読み解いていきます。

9月月次決算ダイジェスト

主要チェーンの9月単月の状況を見てみましょう。

  • 大戸屋:既存店売上が59ヶ月連続でプラスを維持したものの、伸びは1桁台に鈍化
  • エターナル(元鳥貴族):既存売上は8月から微増の1.6%増。10月1日から均一価格を390円から410円へ値上げし、客数減少の影響が注目される
  • ガーデン:直営店の既存売上が前年同月比1.9%減。ラーメンと油そばの「二刀流」の効果は売上には表れにくいとの見方
  • ロイヤルホールディングス「てんや」:既存店客数が11.0%減と2桁割れ。客単価の引き上げで売上減少を一定程度カバーしているが、8月・9月は厳しい状況が続く

出典:フードリンク「大戸屋【26年9月】59ヶ月連続プラス 但し、1桁増にペースダウン」(2026年10月9日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/10/0962025.html

出典:フードリンク「エターナル【26年9月】既存売上、8月から微増の1.6%増 410円へ値上げ、客数減はどの程度で収まるか」(2026年10月8日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/10/0863338.html

出典:フードリンク「ガーデン【26年9月】既存売上1.9%減 二刀流の効果は売上ではない」(2026年10月8日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/10/0863634.html

出典:フードリンク「ロイヤル『てんや』客数割れを客単価アップで凌ぐも、8月・9月とヤバイ状況に」(2026年10月5日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/10/0561938.html

中堅クラスの退出が増えるラーメン業界

値上げに踏み切れない、あるいは踏み切っても客数を維持できない店舗の退出も進んでいます。
2026年1〜9月のラーメン店倒産件数は56件に達し、前年の年間件数(60件)に迫るペースで増加しています。
個人店の閉業を含めると実際の市場退出数はさらに多いとみられ、ビジネスモデルを転換できない中堅クラスの退出が目立っています。

出典:フードリンク「ラーメン店【26年倒産】再び増加 ビジネスモデルを変えられない中堅クラスが倒れる」(2026年10月5日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/10/0561008.html

値上げの持続可能性——米価格低下で”逆方向”の動きも

一方で、値上げの流れに逆行する動きも出てきています。
テンアライド傘下の「てんぐ大ホール」「湊や磯吉食堂」計72店舗は、米価格の低下を受けて10月7日より「ご飯大盛り無料」を再開しました。
高値で契約した旧米在庫の改善が見込まれる2027年1〜3月を先取りした施策とみられ、コスト環境の変化に応じて”攻め”と”守り”を使い分ける動きとして注目されます。

出典:フードリンク「テンアライド、『ご飯大盛り無料』を先取り 『てんや』は『おかわり無料』に戻す?」(2026年10月7日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/10/0765102.html

あなたのお店なら、客数が何%減ると値上げの効果が消えるか

エターナルの「390円→410円」という値上げを例に、客数減少がどこまでなら許容できるかを試算してみましょう。

  • 値上げ前:390円 × 客数X = 売上390X
  • 値上げ後、客数がx%減ったとすると:410円 × (1-x) × X = 売上
  • 売上が値上げ前と同じ水準になる客数減少率は:1 − (390 ÷ 410) = 約4.9%

1 − (390 ÷ 410) ≒ 4.9%(売上がトントンになる客数減少の上限)

つまり、客数減少が4.9%を超えると、値上げによる客単価アップ効果を打ち消し、売上そのものが前より減ってしまう計算になります。
値上げを検討する際は、「どこまでの客数減なら許容できるか」を先に計算しておくことが欠かせません。

⚠ 注意点

値上げによる客単価アップは、短期的には売上をカバーできても、客数減少が続くと中長期的な固定客基盤を損なうリスクがあります。
また、米価格のように原材料コストが低下局面に入った場合、値上げを続けていた店舗ほど”割高感”が強調され、客離れを招く可能性もあるため、原材料価格の動向は定期的に見直す必要があります。

📝 まとめ

多くの外食チェーンが「客単価アップで客数減をカバーする」構造に入っている一方、ラーメン業界では値上げに対応できない中堅クラスの退出が加速しています。
あなたのお店では、値上げによって客数が何%減ると、売上がトントンになるでしょうか。
一度数字で確認し、許容できる範囲を把握しておくことをお勧めします。