「値上げしても選ばれる店」はどこが違う? 外食大手決算から見える明暗

2026年10月19日

🌱 同じ値上げでも、結果は一様ではない

こんにちは!開業支援集団東京Ringです。
2026年も外食大手の値上げが続いていますが、その結果は一様ではありません。
値上げを機に増益を果たした企業もあれば、客数減に苦しむ企業もあります。
フードリンクが報じた10月中旬の各社決算と、同時期に発表された「居酒屋倒産が過去最多」という調査結果を合わせて読むと、値上げの成否を分けた要因が見えてきます。
今回は直近1週間分の記録から、この「値上げの明暗」をテーマに取り上げます。

値上げが効いた企業

値上げを増益につなげられた企業も複数あります。

  • リンガーハット:値上げを背景に営業利益が約4割増加。新社長体制のもとで海外展開を加速
  • コメダ:27年度中間決算は増収増益
  • ドトール・日レス:利益38%増だが、ドトールは値上げで客数が減った可能性があると報じられている

出典:フードリンク「リンガーハット【27年度中間】値上げで、営業利益4割増 次は新社長の下、海外展開」(2026年10月14日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/10/1465756.html

出典:フードリンク「ドトール・日レス【27年度中間】利益38%増 ドトールは値上げで客数減か、洋麺屋五右衛門は50年でもゴーゴー」(2026年10月14日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/10/1464907.html

値上げでも苦しむ企業

一方、値上げが思うように結果に結びついていない企業もあります。

  • サイゼリヤ:売上17%増でも利益率は低下。看板の「ミラノ風ドリア」を320円に値上げし、下半期の立て直しを図る
  • かつや(アークランズ):2024年9月以降客数マイナスが続き、同グループの「松のや」に存在感が移っている
  • ユニシア:主力「ピソラ」の売上が75%増えても、のれん償却や利息・法人税の重さで利益が追いつかない
  • 大庄:卸売事業拡大で利益率が下がった

出典:フードリンク「サイゼリヤ【26年度決算】売上17%増も、利益率低下 『ミラノ風ドリア』320円に値上げで下半期に戻す」(2026年10月15日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/10/1561534.html

出典:フードリンク「かつや【27年度中間】24年9月から客数マイナス累々 『松のや』の存在感高まる」(2026年10月16日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/10/1660924.html

現場に広がる「値上げ疲れ」

東京商工リサーチによれば、2026年1〜9月の居酒屋倒産は167件(前年同期比32.5%増)で、1989年以降の同期間で過去最多となりました。
コスト増と節約志向の中、大手チェーンだけが客数を伸ばす構図が浮かび上がっています。

出典:フードリンク「居酒屋【26年倒産】過去最多 コスト増・節約志向で、大手は伸びる」(2026年10月16日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/10/1660559.html

ブランド力・業態の違いが分岐点に

価格設定そのものの違いも明暗を分けています。
松屋は「牛めし」を480円に値上げしすき家と同額にしましたが、吉野家は498円を約2年間維持しています。
また、スシローは天然魚不足に備え、自社養殖魚「富士山はまち」の販売を開始するなど、価格だけでなく調達面での工夫も進んでいます。

出典:フードリンク「松屋、牛めしを480円に すき家と並ぶ、孤高の吉野家」(2026年10月13日)
https://www.foodrink.co.jp/news/2026/10/1362740.html

あなたのお店なら、競合より高い価格をどこまで維持できるか

吉野家が松屋より18円(498円 − 480円)高い価格を2年間維持できているのは、その差を”ブランド価値”として正当化できているからです。
この考え方を自店に当てはめてみましょう。

  • 自店が競合より高い価格を設定していると仮定(例:自店500円、競合480円)
  • 売上を維持できる客数減少の上限は:1 − (480円 ÷ 500円) = 4%
  • つまり、価格差を保ったまま客数減少が4%を超えると、価格差による増収効果は打ち消されてしまう

1 − (480円 ÷ 500円) = 4%(競合より高い価格を維持できる客数減少の上限)

吉野家のケースでは差が約3.75%相当(18円 ÷ 480円)で、この範囲内に客数減少を抑えられているからこそ、高い価格を維持できていると考えられます。
ブランド力がまだ弱い店舗が同じことを試みる場合は、価格差を正当化する”体験の見える化”(接客・品質・調達背景の発信など)が欠かせません。

⚠ 注意点

値上げが効く企業は、値上げ分を上回る体験価値やブランド力を既に持っていることが多く、単純に金額を真似ても同じ結果にはなりません。
また、居酒屋倒産の増加は、値上げに踏み切れない、あるいは踏み切っても客数を維持できない店舗が増えていることの裏返しでもあります。
自店が「価格差を正当化できる状態」にあるかどうかを、客観的に見極めることが重要です。

📝 まとめ

値上げの成否を分けるのは金額そのものではなく、「その価格に見合う価値をどう伝えられているか」です。
個人店の倒産が増える一方で、ブランドを磨いた大手が客数を維持・拡大している構図は、外食業界全体への示唆があります。
あなたのお店は、競合より高い価格を維持できる客数減少の上限は何%でしょうか。
一度数字で確認してみてはいかがでしょうか。